【serial experiments lain】アニメとゲームで考察が交差する仮想と現実の連続実験がやがて曖昧な現実となる

何を語るべきか、どこまで語っても良いのか。

何を伝えるべきか、何を感じるのか。

そんな因果関係にも似た複雑に絡み合った先に真実はない。

だが結末は必ずある。

記録だって記憶だって断片的でも記録が無くても事象は確実に起きており誰かが認識せずとも

今回のレトロゲームはそんな認識と意識の狭間をテーマに独特な世界観を表現した意欲作にして怪作。

タイトル販売元開発元発売日フォーマットアーカイブス

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・serial experiments lain(シリアルエクスペリメンツレイン)

ジャンルアタッチメントソフトウェアゲーム

プレイ人数1人

・パイオニア

・SR-12W

・パイオニア

・1998年11月26日

・PlayStation(プレイステーション)

・無

本作のセールスポイント

・アニメ版の同作の補填もしくは違う解釈として存在するファンディスク的作品。

・ゲームの形を借りたある女性の非公開記録として不気味だがそそられる演出がにくいメディアミックス作品。

・テレビ放送とは違いゲームは買った人の目にしか届かないという閉鎖的なメディアのためテレビでは放送できないような過激な表現、演出が行われている。

・現在の表現事情からも現在のゲームですらできないであろう表現があるため資料としても大変興味深く、掘り下げたくなる作品。

アニメファンならこのタイトルを見てピンとくる方もいるでしょう。

この作品はアニメ、ゲームとも同タイトルで制作されたメディアミックス作品なのです。

今でこそ本編とスピンオフ作品を同時並行で展開するのは珍しいことではない。

しかし、この当時人気があればスピンオフやファンディスクといったヒット作や結果に乗じた展開はあれど、人気が出るかもわからない作品をメディアミックス展開するのは異例であると同時に挑戦敵はたまた無謀とも言える手法だった。

それもアニメとゲーム!

どちらも少なからず大きなお金が動き個人ではなく組織規模の一大プロジェクトとなった。

その世界観と時代の表現への寛容さなのか無法地帯だったのか今ではなかなか拝めない表現描写が多々見受けられる。

こういった奇作や怪作をプレイする毎に私もそうだが必ず見受けられる事がある。

それは「今では作れない、表現できない」ことを感じている様子だ。

表現の世界は時代に左右されることが多い。

この今ではこういう作品が作れないことを嘆く声を聞くたびに現代の表現に対する視野の狭さと息苦しさを感じる。

自由な表現を「一般常識」で塗りつぶし、現実へと近づけていく。

表現は現実ではない。現実を感じさせることはあってもそこに本物は存在しない。

なのに人は怯える。怖いと感じる。

奇作と表現されるゲームは奇作と表現されあたかも現実離れしたように錯覚させようとするが、奇作こそ現実に最も近くそれゆえ、恐れ、表現は狭まっていったのではないかと私は考えています。

それが現実に起きてしまうことを頭でわからずとも本能は容易に分かってしまうものです。

今作れないものを今触れる。

このことこそ記録の最大の価値とも言えるでしょう。

本作はそんなある女性の記録にアクセス可能なデータが入った媒体です。

serial experiments lainとは

serial experiments lain」とはアニメ雑誌「AX」で1998年3月10日から11月10日まで連載、テレビアニメ版はテレビ東京で19987月6日から9月28日まで放送、ゲーム版は11月26日に発売されました。

当時コンピュータやインターネットで問題になっていたネットワークの世界と現実を混在して区別がつかない世界にはまる依存的な問題が風刺となっていました。

正に今爆発的に人気な「仮想現実」と言われるジャンルです。

しかし本作は「曖昧な現実」をテーマにしており、紛れもない「現実」を描いているが仮想世界と疑いたくなる現実で登場キャラクターはこれが仮想現実であればどんなに良かっただろうと思うような現実を突きつけられ葛藤し狂っていく崩壊とも再生とも思える物語が繰り広げられています。

テーマとして時代の風刺に切り込んだ内容と未来を見据えた内容ですがその実、当時一般では普及していなかったパソコンやインターネットを制作スタッフのオタクっぷりがいち早く取り入れられたという背景がありました。

だからこそ当時の少数派のファンよりインターネットに理解がある今の世の中でじわりじわりとファンを増やす要因となったのかもしれません。

今やネット投稿の凄い人々を「神」なんて称賛しますが、昔の「神」は「ネットワークを支配できる力がある」というような新興宗教的な「神」が存在しており、当時の少数派だった先駆者を神と称賛したもが現在の名残となっている。そんないわゆる「悪い子のたまり場」のようなクラブなど子供が立ち入れない場所に簡単にアクセスしてしまえて子供の吸収力の速さがその後危うい存在ともあり得ることも示唆している。

玲音の父である「岩倉康男」が妻にインターネットやパソコンの良さを理解されなくて嘆くシーンがありますがこれは制作スタッフ自身の嘆きや希望でもあったのでしょう。

玲音が最初に使っていたノートパソコン?ミニコンピューター?のデザイン性は高く、Macを思わせるその外見はただオタクなだけではないPCにデザイン性を求める時代の示唆ともなっていました。

正直このPC今の時代のスペックで欲しい…

私の大好きなブランド「バングアンドオルフセン」にもこんな再生プレイヤーあったな。

ジェネオン・エンタテインメント 2015年10月23日

ストーリー

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多様な音声データやムービーの中に残されたのは、玲音はもちろん、玲音に関わった人達や事件についての豊富な記録。

しかし、それらデータは内容も断片的。

時系列もアイマイ。事実なのか、虚構なのか判別できない内容をかかえている。

データを多く入手すればするほど玲音の謎に近付ける、そんな単純なものではないらしい。

こうしたデータよりもよっぽどわかりやすくみえる日常の会話。

しかし、実際に分かりやすいように見える情報のやりとるの中でさえ…

私達は真実をつかまえそこねている。

個々の事象にとらわれて、こだわりすぎて。

そう、玲音に近づく方法はあなたの中にあり、それを妨げるものもあなたの中にある。

serial experiments lain説明書より

アニメ版とゲーム版の違い

アニメ版とゲーム版の違いは「始まり」、「視点」、「全体像」が主な違いです。

アニメ版とゲーム版の違いは玲音の年齢設定です。

アニメ版での玲音がどのような生い立ちでアニメ版に繋がるかを知ることができ、玲音の事情を知った上でアニメを見ると玲音の言葉や感情、感じていること、考えていることが見えてきます。

ファンディスク的な設定としてアニメ版と差別化させたのはメディアミックスと同時展開だったためアニメ版だけが全ての要素を補完できないようにして本作の仕掛け要素の一つでしょう。

視点はゲームという媒体に課せられた「プレイヤーが操作する、決断する」ということに乗っ取りプレイヤーが玲音を観察してるような良く言えば探偵、カウンセリングのような視点で玲音の記録を覗き見ることができます。

閲覧できる記録の種類は「動画ファイル」と「音声ファイル」が収録されています。

それぞれボイス付きなのも嬉しい要素ですが私は特に音声ファイルがこのゲームの重要な要素となっていると感じました。

音声ファイルの内容は「日記」や「カルテ」、「カウンセリング」の様子などが収録されています。

こういった文書的な記録は本来記入者が声に出して読むものではなく、他者が内容を確認して理解するものです。

しかし、そこには書いた人の意図も感情も全て含まれているわけではありません。

本作はその文書を書いたキャラクター本人が読むことで事柄の雰囲気や特に「感情の記録」も鮮明にプレイヤーに伝わり、「記録の重み」として機能しています。

全体像は物語の世界を進行させるうえでアニメ版は全体像の進行、つまり玲音を取り巻く人々や環境の変化も進行させなければならないため様々な人々の思惑でストーリーは進みました。

ゲーム版はカウンセラーの記録はあるものの玲音を中心とした記録の為、玲音の成長記録が物語の起点となり玲音からカメラが外れるとない、正に「玲音のドキュメンタリー」のような内容となっている。しかもドキュメンタリーといっても編集されていない生々しい記録なだけに「serial experiments lain」ファンであればよだれものでしょう。

玲音がレインでlainがれいん?考察するのすら怖い人格形成の在り方

原作主人公であり本作の主人公でもある「岩倉玲音」は内向的な普通の女の子で超能力があるわけではない。

ただし時代に選ばれたと言うべきか非常にコンピュータの特にハッキング技術には優れている。

本作は「仮想現実」のことを度々「ワイヤード」と表現するがこれは繋がりを説明する際に用いられることが多く。

玲音は現実世界とワイヤードの世界で人格を使い分けています。

よくあるネットだと性格が現実と違うなんてことがありますが、玲音も様々な「レイン」や「lain」を使い分け立ち振る舞っていた。

だがだんだんと現実とワイヤードが入り混じった「存在」となっていく玲音はまるで自分の意思なのか誰かの意思なのか分からなくなっていく。

そもそもゲームなのか?

ゲームという媒体を借りた海賊版の機密情報?と私は表現の認識としてあります。

本来は出回らないはずの玲音しかり患者の記録が流出してしまったという演出的な要素があります。

その根拠は記録のオリジナル性です。

本作の動画、音声の記録はオリジナルデータに近く、家庭用の記録媒体で記録されたもののように映像の歪みがあり、音声もノイズがあったりします。

記録の閲覧は本作を起動すると玲音のデータが散らばったサイトに自動アクセスする仕組みとなっています。

ネットの階層で上層部が「現在」、下層部に行くほど「過去」のデータを閲覧することができます。

これだけです。サイトのナビをしてくれるのはワイヤード上の人格?玲音にそっくりですがゲームではプレイヤーのナビゲーションを行ってくれる玲音に扮した「人格」という表現となっています。

この人格が唯一プレイヤーが操作するアバターといったところでしょうか。

階層ごとのデータは円柱状の構造でアクセスレベルごとに円柱を行ったり来たりする構造です。

サイトの移動やアクセスの際にナビゲーション玲音はアバターとして様々な表情を見せてくれるのはファンディスクならではのデスクトップアクセサリー要素となっています。

閲覧できるデータの種類は「患者としての玲音の記録」、「玲音の日記」、玲音のカウンセリングを担当している「米良柊子の日記」、「カウンセリングの様子の録音」、「カウンセリングカルテ」、「玲音の友人からのヒアリング記録」がある。

どれもカウンセリング目線から玲音という人物、人格を知るためには重要なデータでありプレイヤーも知りたいであろう事柄が収録されています。

本作はアニメ版のネタバレになってしまうため詳しい内容は避けるが設定自体はアニメ版と少し異なるため「serial experiments lain」のパラレルワールド的な位置と見ても良いし、玲音の妄想かもしれませんし、はたまた作られたデータかもしれない。そんなSFチックでカルトな内容を妄想しながら楽しんで頂けると我々から見たら「serial experiments lain」という仮想の世界を「仮想と現実どっち?」という訳が分からなくなった自分を怪奇な世界にいざなうなんていう「玲音現象=作品のファンになってしまう」が起こっていることでしょう。

まとめ

攻略本の帯には「悩まず進める」とありますがそれはおすすめしません。

悩んで進んでください。

悩まずに進むと攻略本の解説は一つの答えのみで完結してしまいます。

そもそも本作に攻略というものはありません。

仮にゲームをプレイするという意味での攻略であればそれは自分で感じたもののみです。

正解はありません。真実もありません。

なので攻略というプレイ方法だとモヤッすると思います。

どうしても答えらしい答えが欲しい場合はアニメ版を視聴していただくと本作の補填となるでしょう。

そもそもアニメ、ゲームどちらが本編かそれすら視聴者、プレイヤーにゆだねられています。

いろいろな解釈ができる作品なので未だにファンは多くコミュニティも存在するのでそれらの考察を閲覧して楽しむ意味でも本作に触れるとより楽しみが広がります。

また当時から時代が進んだことで本格的に仮想現実やインターネットによるコミュニケーションのあり方が当たり前になりました。

それらを示唆した本作がどのように凄かったかを再認識できる時代に突入してきたことも未だファンが多く存在する理由でもあるでしょう。

個人的な感想はゲーム版の方が後発であることが原因かは分からないが玲音のデザインはキャラクターデザインを担当した「安倍吉俊」の画風に近く、より生々しくテレビでは扱えなかった演出が多く感じました。それだけにゲームの方のアーカイブスは現在の倫理的にはまずダメな表現があり配信行われず、中古市場で本作は購入するしかないのが現状です。

アニメは動画配信でもあるのでそちらに触れた上で本作に興味を持っていただければと思います。

この作品不思議なことにアニメ、ゲームどちらを先に触れるかで同じものを体験してきた人の考えが大きく変わります。

あなたはどちらでしょうね…

パイオニアLDC 1998月11年26日

それでは次もね~

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