【ルールオブローズ】嫉妬が渦巻く百合サイコホラー

社交界といえば王族、貴族、上流階級などが集う交流の場。

それは当然上流階級の子供にも当てはまる。

小さい頃から社交界の場に出て、自分の立場や階級を理解させたり、将来の許嫁などを探したりなど教育を受ける。

そうでない中流階級の人々も上流階級に憧れて社交界ごっこ、主に女子などがお姫様ごっこに興じることが多い。

紅茶でもてなしたり、スカートをたくし上げてお辞儀をして社交挨拶。

笑い方をおほほにするなどいわゆる上品なおままごとだ。

今回紹介するレトロゲームはホラーテイストにママ友も震え上がる社交界ごっこを繰り広げる少女たちの物語。

タイトル販売元開発元発売日フォーマットアーカイブス

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・ルールオブローズ(RULE of ROSE)

ジャンルサイコミステリーアドベンチャーゲーム

プレイ人数1人

・ソニーコンピュータエンタテインメント

・パンチライン

・2006年1月19日

・PlayStation2(プレイステーション2)

・無

本作のセールスポイント

・百合+ホラーという珍しいジャンル。

・嫉妬と憎悪からくる百合社会の縮図。

・登場人物みんなどこか常識が欠如している狂った世界観。

ストーリー

1930年 英国ーー。

ジェニファーが迷い込んだ子供達の王国。

それは子供たちが支配する特別な秩序の世界。

その無邪気な想いは理不尽な掟を押しつけ残酷な行動となってジェニファーに降りかかる。

薔薇に誓いを立てた無垢な少女たちの禁じられた遊びーー。

「ようこそ、私たちの社交界へ」

 

月の明かりが辺りを仄淡く照らしている或る夜。

ジェニファーは、田舎道を走るバスの中で不思議な少年に出会う。

少年は絵本をジェニファーに手渡し、バスを足早に降りてしまう。

一人知らない場所に残されたジェニファー。

少年を追いかけていくと、そこは時代に忘れたように寂しくたたずむ大きなお屋敷だった。

少年は自分に何を伝えたいのか。

少年から渡された、このリトルプリンセスの絵本と自分との関わりは何なのか。

ジェニファーは答えを求める為、少年を追い、人気の無い建物の中へと足を踏み入れていく……。

 

やがて出会った汚らわしい犬、ブラウン。

忠実にジェニファーに付き従ってくれるこの友達との関係は……。

自分に向けられる悪意は一体なぜなのか?

ここはどこなのか?

私は……。

「ルールオブローズ」説明書より

それは子供たちによる禁断の社交界ごっこ

本作は子供のようだが19歳と意外と大人な少女の奇妙な物語。

主人公の名は「ジェニファー」。

きしくも名作ホラーゲーム「クロックタワー」の主人公と同じ名前。

本作は犬の「ブラウン」と協力して攻略を進めていきますが、クロックタワー3の続編予定で開発されていて後に「デメント」として発売されたホラーゲームでも少女+犬の協力による攻略を売りにすたゲームシステムとなっており、本作の方が後に発売されているが1年と離れていないためインスパイアを受けているかは定かではない。

登場キャラクター

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不幸で非力で気弱というホラーさせたら卒倒しそうな少女。

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そんな少女が不気味な「ローズガーデン孤児院」、「幽霊飛行船」を舞台に繰り広げられるホラーな物語。

本作の世界には「赤いクレヨンの貴族」と呼ばれる派閥のような社交界ごっこのグループがある。

社交界には規律があり、逆らうとおしおきをくらってしまう。

赤いクレヨンの貴族は毎月貢物を要求され、ママ友グループの少女バージョンといった非常に陰湿な関係性が築かれている。

人間がいるの!?人間がいると安心するのはまだ早い。

こういう女の関係はホラーよりも怖かったりします。

赤いクレヨンの貴族リーダー格の「ダイアナ」。

ダイアナという名前通り高貴の位置づけで赤いクレヨンの貴族の中でもリーダー各。

高慢な性格をしている。

融通が利かない頭でっかちだが頭脳は非常に優秀な「メグ」。

飛行船内の発明品の数々は彼女が作成したもの。

物静かで無口な「エレノア」。

無口であるが誰よりも外の世界に興味がある様子で幸せの国に連れていってくれる鳥を探して、いつも鳥かごを手放さないでいる。

そして人間的には本作で最も狂気に満ちた嫉妬深い「アマンダ」。

赤いクレヨンの貴族の下っ端でジェニファーとは貢ぎ物をめぐって対立をする人物。

その執着心に満ちた狂気の顔芸は本作の見どころの一つでもある。

そしてジェニファーに友好的な「ウェンディ」。

彼女は子供たちの中でジェニファーに優しい。

いったいなぜ?

基本的に子供たちに限らず本作に登場するキャラクターのほとんどがジェニファーに対して嫌悪感を抱いている。

それは今嫌いになったものではなく因縁めいたものを感じる。

積年の恨みのようにも見える。

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ジェニファーはバスの中である少年に絵本を渡されます。

そこから物語はスタートするのですが、この絵本、妙な事にジェニファーのこれからの行動を暗示し、過去を紐解いていく絵本となっていきます。

一体ジェニファーの過去に何があったのか、ジェニファー自身はそれを忘れていて語られない部分も多く、その記憶回帰のためにこの本作の世界に誘い込まれた様子。

ジェニファーは絵本をくれた少年を追ってローズガーデン孤児院に誘い込まれました。

そこで飛行船への搭乗券を手に入れます。

そして搭乗券を孤児院に入れて探索を始めます。

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孤児院の中には孤児院らしいものがあります。

孤児院ですから。

しかし他人には何気ない孤児院もジェニファーにとっては懐かしさすら感じられるものが随所にちりばめられています。

孤児院は夜のせいか活気がなく、人の気配も感じらず不気味な雰囲気を醸し出しています。

庭を掘るように誘導されるジェニファー。

そこには空の木の棺桶が。

戸惑うジェニファーに紙袋を被った子供たちが背後から襲いかかる。

そうしてジェニファーは棺桶に閉じ込められてどこかに運ばれていきました。

本作では物語が進みジェニファーの意識が途絶えるごとにバスの中で出会った少年が語りかけてきます。

どうもジェニファーの過去を知っている素振りをしてくるもったいぶった態度。

語られることは少ないですがどれも物語の重要なキーワードとなります。

運ばれた先は硬い天板の上。

見知らぬ場所に来ていました。

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そこからジェニファーは貢ぎ物を探したり船内の謎解いていくパートがスタートします。

本作ではジェニファーの強い味方として2つの重要なものが登場します。

まず1つ目は攻略の相棒、本編のキーパーソンとしてジェニファーに忠実な犬の「ブラウン」。

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物語の途中で宙吊りにされているところをジェニファーが助けて以来、なつくようになります。

ブラウンの役割はその犬としての能力。

本作はジェニファーを操作してものを調べたり、敵に攻撃を行ったり回避したりします。

ブラウンはさらにジェニファーに見えないものを探索してくれる「Findシステム」があります。

Findシステムは所持しているアイテムの匂いに従って匂いの元を見つけることができます。

例えば「クッキー」をFindした場合、クッキーが入っていた「クッキーの箱」を見つけるなど犬ならではの探索を行うことができます。

また戦闘に参加することや相手を威嚇するなど、ひとりぼっちのジェニファー、そしてプレイヤーには本当に心強い相棒です。

2つ目は「バケツの騎士」と呼ばれるバケツのヘルメットをかぶったかかし。

これもジェニファーに縁深いものであり本作のセーブポイントにあたります。

また話しも聞いてくれてゲームのヒントをくれるので行き詰ったらバケツの騎士に相談することが物語を進める攻略のヒントとなります。

バケツの騎士周辺は安全地帯なのでマップで唯一ほっとできる場所なのでバケツの騎士が愛おしく思えてきます。

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そんな頼れる相棒たちとともに飛行船内を探索するのですが、そこは子供たちの楽園、というよりかは子供たちが支配する領域となっており大人達の立場は何とも弱々しい。

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子供たちにいいようにされ、おしおきでこの始末。

元々孤児院の関係者と思われますが真相のほどは定かではない。

ただそこには地上に何か大切なものを置いてきたような、そんな狂気の空間が広がっていました。

本作の物語の恐ろしい部分は物語や噂が恐ろしいということです。

どういうことかというと絵本の物語はノライヌと言われる怪物によって作られており、これからジェニファーの起こす行動に類似していること。

そして子供たちから発せられる妖精さんやノライヌの噂。

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子供たちが妖精と噂するのは子供大の小さなおぞましい敵のことでジェニファーの行く手を阻みます。

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時にはその妖精をなぎ倒し、時には振り払い逃げ、飛行船内を探索する必要があります。

飛行船内にはジェニファーが使用できる武器もあり、それぞれを使用して敵の脅威を切り抜けていきます。

本作マイナーな作品であると同時に百合要素や性描写、上記の子供のようなものを倒す要素がアーカイブスに繋がらない要素でありそうです。

はたからみたら結構えぐい描写ですもんね。

またあの「MOON」や「UFO」、「チュウリップ」など「ラブデリックゲーム」を手がけたチームの元メンバーで構成された「パンチライン」が開発ということもあってプレミアゲームとなっています。

さらには女子トイレでの描写。

女子トイレ自体ゲームではほぼ侵入ご法度ですが、本作はジェニファー自身が女性ということもあって入ることができます。

そこで語られる女子の噂話しやチクリ話しなど妙にリアルで生々しい。

こうした描写も他の作品にはない持ち味となっています。

さあここからジェニファー絵本の物語とジェニファーがどのように交錯していくのか。

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ジェニファーはこの空間…いや子供たちにすら怯えながら、子供たち赤いクレヨンの貴族に従いながら貢ぎ物を集めることになります。

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赤いクレヨンの貴族はジェニファーに罪を擦り付けて度々ジェニファーにおしおきを仕掛けます。

メグからダイアナへのラブレターをチクったエレノア。

無口なくせに余計なこと言いやがって、そのせいでメグはお怒り、妖精さんは襲ってくるわで大変だぞ!

女子のチクリ合いって怖っ!

これが女性界隈の怖い所でありもしない噂や罪の擦り付け合いで誰か一人、特に気が小さくて怯えている人を対象にするところが何とも恐ろしい。

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しかも自ら手を下すのではなく「妖精さんたち」を使いジェニファーに襲いかかる。

ジェニファーはこれを回避するには赤いクレヨンの貴族に貢ぎ物をして地位を手に入れるしかありません。

しかし、章を追うごとにおしおきの苛烈さは増します。

遂に貢ぎ物にブラウンが指定されブラウンは殺されてしまいます。

そしてブラウン殺しを指示したのはなんとジェニファーに友好的だったウェンディ。

ウェンディはなんと赤いクレヨンの貴族のトップである「赤い薔薇の姫」だったのです。

今まで友好的だったウェンディ。

その友好的だったは愛ゆえの愛情表現だったのです。

しかし、裏ではジェニファーを子供たちの憎みの矛先へと誘導していった黒幕。

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さすがのジェニファーも逆上、ここでは孤児院時代のジェニファーに戻るという演出がなされており、ウェンディと友達だったころの目線でウェンディに対して怒りをぶつけます。

自分の赤いクレヨンの貴族に対する怯え、そこから招いてしまった不幸を悔やんだのです。

さすがのウェンディ、そして赤いクレヨンの貴族のメンバーもたじろぐ。

そしてその下剋上からジェニファーは赤い薔薇の姫としてメンバーに迎えられる。

晴れてこの世界のトップとなったジェニファーですが、悲劇は瞬く間にジェニファーたちを飲み込みます。

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ノライヌの出現です。

ノライヌは孤児院時代、子供たちが噂をしていた子供たちをさらっていく怪物を表していました。

孤児院の「ホフマン先生」も気味悪がっていたノライヌ。

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ホフマン先生とはローズガーデン孤児院の先生であり厳しい先生として子供たちに恐れられる反面、女子に対してはスケベじじいであり、物語や日記の描写ではそれを思わせるような記述があります。

ボスとして登場し縄で縛られた哀れな姿は子供たちが望んだ姿だったのでしょうか。

そしてノライヌの特徴はある人物にそっくりだったのです。

ジョシュアの父親であり、飛行船事故の際に唯一の生き残りであり両親を失ったジェニファーを誘拐してジョシュアとして育てることでジェニファーを監禁していた人物。

ジョシュアは体も弱く幼くして死んでしまったことからグレゴリーの精神状態に異常に変化させていくことになる。

実はジェニファーがローズガーデン孤児院にきた経緯がウェンディによる救出があったからだという事が判明する。

さらにそのことを受けて一層精神状態が不安定になったグレゴリーは孤児院の噂の怪物ノライヌへと成り果てる。

しかし、それは噂に信憑性を持たせるためにウェンディがジョシュアになりきってグレゴリーを調教しノライヌへと変貌させたのだから驚きです。

正に女王様。

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ウェンディは「ノライヌ(グレゴリー)」をジョシュアに変装することで自由自在に操り、ジェニファーに襲いかかる。

もうジェニファーを殺すことでしか自分のものにできないと感じたのか。

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ウェンディは何よりもジェニファーを愛していた。

ウェンディは何よりもジェニファーの前でブラウンを処理したくてブラウンを生かしたままジェニファーに見つけさせたのかと思うとゾッとする。

嫉妬の対象が犬であったことで少し緩和されているが、これが異性の男の子だったとき、一体どうなっていたのだろうか。

ジェニファーがブラウンに抱いていた感情はウェンディの嫉妬に値するのだろうか。

ジェニファー自身はブラウンのことを「友達」と言っていたので飼い犬としての愛情だと思うが、わざわざエンディングでブラウンに首輪をして納屋に閉じ込めるという、深読みすれば過剰愛情、さらっと見れば他の飼い主と一緒の行動。

しかし、これも人間の異性だったら…。

そこまでウェンディは深読みしたあまりこのような惨劇が起こったのではないかと考察した。

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本作は誰か個人の恨みではなく、子供たちそれぞれに抱える闇が生みだした壮大な大人への復讐と子供たちの楽園への懸け橋になるであろう飛行船を舞台にしたのだと感じた。

子供たちは純粋がゆえ、この世界では狂気に見えるが純粋に感じたものを発言していたりするだけだったりする。

特に男子たちに至ってはそれほど脅威、狂気に感じない。

船内でチャンバラごっこをやっていたりなど子供らしい一面ばかり目撃する。

問題は女子だ。

その中でもとくにアマンダは顔芸一つとっても狂気である。

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性格は臆病だが強欲で他人のものを奪ったり、裏切ったかと思えば手のひらを返したりと図々しいおばさん感がこの年齢にしていかんなく発揮されている。

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正に女王様のご機嫌取りで主人公にはめっぽう意地悪な少女漫画の悪役のごとし。

正直人間関係でいったらアマンダが一番怖かったです。

意外とアマンダとは下っ端同士、争ったり遭遇する場面、相まみえる場面が多いので本作の注目のやり取りでもあります。

良くも悪くも女の子同士のキャッキャウフフが見れる作品となっています。

まとめ

子供だからこそ純粋無垢で、子供だからこそ愛情表現や扱いが苦手で狂気にはしってしまう。

そこに絵本の物語という想像の狂気を現実にしてしまった本作。

本作カメラワークや会話のテンポなどが少し遅いですが、じっくりと世界観に浸るにはこのぐらいねっとりの方が狂気的な愛情表現も伝わるでしょう。

百合ホラーということで中々希少な作品として名高い本作。

音楽も非常に素晴らしく不気味さと物悲しさを両立しています。

真の百合好きがプレイしたらどう感じるのだろうか。

ホラーゲームですが意外とホラー分は少なめなのでオススメです。

ソニー・コンピュータエンタテインメント 2006年1月19日

それでは次もね~

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