世の中には『奇ゲー』と呼ばれるものがあることをご存知だろうか。
奇ゲーはありていに言うと「よくわからないけど何かに惹きつけられる」そんな不思議なゲームのことをいう。
勘違いしないで欲しいのは『クソゲー』ではないこと。
表現が斬新すぎてついていける人が少ないが確実に好きな人はいる『マニアックなゲーム』と考えてもらって構いません。
今回紹介するレトロゲームがそんな奇ゲーの中から内容とパッケージまでその奇怪さが伝わってくるこちらのゲーム。
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・GERMS(ジャーム)-狙われた街-
ジャンルアドベンチャーゲーム プレイ人数1人・ケー・エー・ジェー
・ケー・エー・ジェー
・1999年7月22日
・PlayStation(プレイステーション)
・無
・当時では珍しいオープンワールドの原点とも言える要素が惜しみなく実装されている。
・90年代のカルト的要素も含む奇ゲーの怪作。
・ミュータントという宇宙人、異星人、地底人など個性豊かな?デザインの奇怪な敵が登場する。
・倒した相手の残留思念(プロフィール、ひとりごと、攻略のヒント)などが見れて味方でもつい倒したくなる、テキスト要素。
ストーリー
東西北の3方を山に、南を海に囲まれた約3km四方の地方都市、煉瓦造りの倉庫、古い大教会、ホテル、病院。
現在の街の大きさには不相応な建造物が、ローマ帝国の遺跡のように街のあちらこちらに残っている。
かつて、この街は北西の山中にある「ヤマサキ炭鉱」で栄えた。時の移り変わりと共に、炭鉱は閉鎖され、街も寂れていった。
立派すぎる建造物は街が栄えていた当時の名残りだ。
これが、舞台となる「街」だ。
この「街」の中で、プレイヤーであるあなたは、一人の新聞記者になる。
あなたは、高校時代まで「街」に住んでいた。
しかし、炭鉱が閉鎖され、親が職を失い、家族とともに「街」を離れた。
それから20年程の歳月が過ぎた。
全くの偶然から、あなたは、高校までを過ごしたこの「街」の小さな支局に転属になる。
支局には、アシスタントの少年一人がいるだけだ。
机の上に、1台のコンピュータがある。
そこに、新聞の購読者でもある「街」の人々、高校時代に最も親しかった友人フジタ、高校の3年間を通してガールフレンドだったナオミなどから、メイルが寄せられる。
メイルを通して、あなたは、「街」のどこかがおかしくなり始めているのに気がつく。
数日前、街の北部の山に発光体が落下し、そこから「何か」が広まった。
家族や職場の同僚が「見ず知らずの何者か」に次々とすり変わっていく奇妙な「妄想」を訴える人々が現われる。
「街」と近隣の地域を結ぶ交通機関、鉄道や高速道路の事故が多発し、「街」が外界から遮断されていく。
エネルギーの研究をしている「フジタ」が、発電所付近の奇妙な「場の歪み」を計測する。
何者かが「街」の侵略を開始している。
彼等は、伝染するように広がり、人々と融合してミュータントに変えてしまう。
彼等は、意識体が進化・変貌していく際に発する生命エネルギーを糧としているのだった。
「GERMS-狙われた街-」説明書より
早すぎたグランドセフトオート
本作は3Dマップで構成されており一人称視点で物語の舞台を探索します。
当時のマシンパワーのせいか、あれもやりたいこれもやりたいの要素が混ざり合ってグラフィックとしては物足りなさを感じるかもしれません。
しかし、私は予算とかマシンパワーうんぬんより自分たちの表現したいことを無理にでも形にしてみた、という雰囲気が好きなゲームです。
その割には顔のグラフィックだけモーションキャプチャで作ったのかと思うくらいリアルです。
逆に顔以外はカクカクなので一般人も不気味にミュータントに見えてしまう、それが味でもあるんですけどね…
その証拠にグラフィックでの再現度は低いですが、マシンパワー以外で補える『ゲーム内の設定、システム』が非常に面白い。
まずは「移動手段」ですが徒歩、電車の移動もありますが、「車で移動」することも可能です。
しかもどこからどこへの選択式ではなく自ら操作してしかも一人称視点で操作できるのです。
これによりハードボイルドな世界観やあえて車という密閉空間から見る景色はまた不気味に街を映し出します。
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マップは非常に広く交通機関や車を使わないと移動が大変です。
パッケージ同梱の説明書兼マップを見ればその広さがわかります。
そして多くの建物入ることができ、外は殺風景な白黒ですが内装はとても個性豊かで探索・調査が楽しくなります。
また昼夜の「時間の概念」の存在。
プレイヤーの状態異常によって敵味方が変わる。
一般人を殺害できるなど自由度の高い世界観。
また一般を殺害し過ぎるとペナルティとして警察が出動するなど現在のオープンワールドのもととなる「現実世界のリアル感」を見事にシステムで再現しています。
世界観を設定とシステムで表現した侵略者ものの奇作
物語はプレイヤーが人々を「ミュータント化」させる「何者か」の侵略から街を救うことが目的となります。
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プレイヤーは事務所のコンピュータで「侵略された場所」を特定し潜入し、その原因となるものを倒していきます。
侵略された建物内には何者かによって「変異」させられた人々がプレイヤーを襲います。
敵、更には味方(街の住人)も殺害しても「残留思念」というものが現れます。
本作の残留思念とは元々人間だった人々の「名前」、「職業」やゲーム攻略のカギとなる「考えていること」、「ヒント」を見ることができます。
残留思念は人の本心や不気味な部分が見えてヒントうんぬんの前にテキストとして興味が湧いてくるので、悪意的な話し味方を倒して残留思念が見たいという悪魔のささやきでついつい味方をほふってしまいます。
上記の残留思念のプロフィールを見ると4才って…変異した人々の中に子供もいるのか…
間接的に子供を…今じゃ倫理的にありなのか?モンスターだから良い?
どちらにしろ表現はなんとも奇抜です。
ミュータントのデザインも「クーロンズゲート」を彷彿とさせる畏敬の形をしています。
これはサブカル好きの人にはたまらないでしょう。
その妨害を乗り越えて建物のボスを倒すとその建物(ステージ)はクリア(解放)となります。
ちょっとサイコな探偵ものとして面白い設定です。
さらに攻略の順番、フラグの立て方まで自由度が高いです。
しかし、残念なことに元祖オープンワールドとも言われる本作は当時のゲーマーにとって斬新すぎて自由度が高いという事は何をしていいかわからないというギャップも近年まで知られなかった要因でしょう。
さらに面白いのが「プレイヤーのミュータント化」です。
ゾンビゲームなどの世界設定としては噛まれたり、菌に感染するとゾンビ化してしまう設定ですが、ゲームシステム上感染したり倒されたりするとその時点でゲームオーバーとなります。
しかし、本作は変異した人々にやられると「プレイヤー自身がミュータント化」してプレイすることができます。
ミュータント化すると敵味方が逆転します。
変異した人々は味方に一般人が敵となります。
ミュータント化は治療することができ、治療後はまた通常の敵味方関係となります。
しかし、考えてみてください。
ミュータント化した主人公が治療の手立てを探すために意識があり行動できるということは他の人もそうなのでは?
もしかして変異してしまった人々も意思疎通ができなかったり変な妄想により判別がつかなくなっていて攻撃の意識はないのでは?
と考察をめぐらせる不思議な世界観の設定ゲームシステムが魅力的ですね。
上記で掲載しているタイトルロゴ無しの奇怪なグラフィック…
そして見てください!このパッケージディスクの裏のグラフィック!
これまた奇怪な何を意味するのかワクワク感と不気味なカルト感が出ているでしょ!
このパッケージなどでも伝わってくるように魅力的ですがお世辞にも売れるパッケージではないですよね。
まとめ
本作をプレイしてみるとゲームも面白くて、魅力的、人を惹きつける力やマニアックな要素があっても「売り方」が凄く大切なんだとしみじみ思います。
現在、インターネットが普及し隠れた名作が掘り起こされ、再評価を受けアーカイブスが望まれる作品が増えてきています。
もし本作が売れていたら、和製グランドセフトオートとしてPS2、PS3、PS4とマシンパワーを活かした開発環境で本作のスタッフの発想力を活かしたゲームを作っていたなら…
なんてタラればの話しですが、もしかしたらそんな未来があって逆にグランドセフトオートが食われていたかもしれない。
そんな可能性を感じたゲームでした。
それでは次もね~