【空の境界 第五章 矛盾螺旋】真実は螺旋状に集約されやがて一つとなり散ってゆく 感想 微ネタバレ

 空の境界10周年メモリアル上映会に行ってきたのでその紹介になります。

今回は物語の核心へ迫る章、黒幕の正体と今まで謎として隠された目的が明かされます。

空の境界じ・け・んの真相が知りたい方は第五章だけでもことの真相はつかめるでしょう。

しかし、型月ファンや空の境界ファンはそんな邪道はしませんよね?

あくまで両儀式を取り巻く環境や心情が知りたいはず。

物語はクライマックスですが、空の境界は完結いたしません。

これで一息つきたいところですがそうは問屋が卸さない。

それでもその逆も許されない。

やはりこの第五章なくして空の境界は語れません!

第五章矛盾螺旋

1998年10月

少年は逃げていた。

ただひたすら逃げていた。

それはまるで友人同士のじゃれあいのようであったが、追いかける方の顔面は殺意剥き出しである。

少年は足はその軽い足取りで追ってから悠々逃げていた。

しかし運動能力が高くともスタミナが切れてしまえばただの青年である。

青年は追ってから殴る蹴るの暴行を加えられる。

青年が何をしたのかもはや傍観者にとってはどっちが正義かの分別はつけられない。

しかし、強者はその興味本意だけで難なく荒々しいその場に入ってくる。

蒸気の向こうからする声は中性的でどこか力強い。

得体の知れないもの弱者か強者かもわからぬその人影に追っては威嚇し襲い掛かる。

しかし軽くいなされ難なく撃退されてしまう。

声の正体はその蒸気が晴れるとともにはっきりしてくる。

それは、中世的な声とは裏腹に美しくとてもきれいな瞳をした少女だった。

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これが青年「臙条巴」と「両儀式」との出会いである。

巴は式に助けを求めた。

巴は親殺しの殺人犯であり、式は生粋の殺人衝動の持ち主。

殺人犯なんて怯えるうちに入らないのだ。

それに式は巴が殺人犯に見えなかったのだろう。

殺人を犯した人間の臭いというべきかそれを感じ取れなかったためだろうか。

なんと式は巴をかくまうことを率先して引き受ける。

当然巴は年相応の男子の考えが及ぶ。

殺人犯が知らない異性の家に相手からかくまう提案をされたのである。

とても正気の沙汰と思えない。

そんなことを考えつつ式の家でしばらく奇妙な同居生活を送ることになる。

巴はそんな生活を送りつつ毎日街の大通りに出かけ自分の犯した殺人が報道されないか毎日、毎日かよった。

ある日はまだ殺人を犯して日は浅い、ある日は死体の発見が遅れている、ある日は少年犯罪のため報道が慎重になっているのだろうと思いつつ巴は大通りに通い続けた。

しかし来る日も来る日も同じ一日から抜け出せないかのように巴の両親に関する報道はない。

来る日も来る日もそうして過ぎていった。

このあたりが式の家にテレビがないことと、携帯電話が今のスマートフォンのようにニュースなどが見れずに純粋に携帯する電話機としての機能しかなかった時代の味があり表現も

家など安全地帯でヌクヌク「ニュースアプリに記事ないぞ」とか軽い感じではなく、大通りのベンチに腰掛けいつ自分が指名手配され周りに認知されるか怯えながら報道を待つという

緊張感がある表現になっている。

そんな生活が続くにつれ巴の中に式への恋心が芽生えてくる。

巴と共同生活をするうちに式の中にも慣れがでてき始める。

本来「」を失った「」はぶっきらぼうで人との繋がりを遮断しているところがある。

しかし単純接触の法則なのか式が燈子や幹也、鮮花意外とこれだけ軽口を叩けるのは珍しい。

個人的に驚いたのが巴に対して「モテそうな顔してんのに」というセリフ。

式の感覚の中でモテそうな顔の造形があるのが意外だった。

お嬢様の家系なので造形美に関して一流なのだろうがモテそうという曖昧で若者の言葉のような感覚があったのだと。

若者だけどちょっと浮世離れしていて世間知らずというか興味がない風なのに。

巴は恋心を式にぶつけるが軽くいなされてしまう。

そりゃそうだ幹也ラブだもん。

ミキティーーーーーーーー!

お気づきだろうか?

前半からお馴染みキャラクターたちの影がない。

幹也は出張に出ていて暫く式の家には来ていない。

そんな式にとって巴は良い話し相手であっただろう。

巴にも幹也の愚痴を漏らすようになる。

愚痴というよりも巴には思い人を待ち続けるツンデレ少女にしか見えなかっただろう。

枕に顔を埋めながらひたすら照れ隠しと言わんばかりに腰の短刀を突き立て悶える。

その時、巴は悟っただろう失恋だと。

この狂気にも似た綺麗なその子が惚れるぐらいの男だ叶うはずがない。

もはや只々一緒にいる時間が幸せだった。

そんな巴君はあまりの純情っぷりに式の為なら死ねるとまで言い放つのだ。

そんなゲームDSにあったような…

 

しかし、本編はそんな恋に焦がれた少年の純情物語ではない。

恋に焦がれた殺人犯である。

物語の真相にたどり着くには少年の恋心ではなく犯行の有無である。

現在、巴少年は世間では殺人犯という認識はない。

巴少年は今のところ痛々しい自称殺人犯なのだ。

巴の殺人動機は「母親に殺されそうになったから」

巴の事件のあらましはこうだ。

失業、交通事故の加害者として世間から見放された父親がすさみ家庭は崩壊。

巴の母親も度重なる暴力に耐えられなくなり一家心中を図る。

その際、父親を殺害した後巴を殺害し、自身も自害するはずが巴のとっさの防衛により巴は母親を殺害。

小川マンションから逃亡して現在にいたる。

式は仕事がてら蒼崎燈子の会社「伽藍の洞」に出入りしている。

その際に燈子が話していた調査内容と巴の供述している実像のない殺人事件を重ね合わせる。

今の関係も悪くないが殺人犯とも判定されず、まるで実像のない巴に思うところがあったのであろう式は巴とともに殺人が起きたとされる「小川マンション」へと乗り込む。

失業し母方の親の支援や巴のバイト代があるとはいえ、こんな高級そうなマンションによく住めるなはさておき。

核心に迫る内容なのでここからはあまりネタバレ無しでいきます。

第五章まで私の感想に付き合ってくれたみなさん、ここから先は御自身で確かめる必要があります。

ここからは式と巴、同じくして燈子と幹也が小川マンションの調査に乗り出します。

式と巴は「荒耶宗蓮」、燈子と幹也は「コルネリウス・アルバ」と対峙することになる。

この二人は燈子の魔術協会の同期であるが魔術師同士求めるものの違いであらゆる確執が生まれる。

とくにコルネリウスは燈子に対して異常なまでの嫉妬心と勝つことへのこだわりを示しているが燈子の眼中になどない。

荒耶宗蓮は自身の起源「静止」により起源覚醒後は不老となっている。

そのためあらゆる時代を見て、人間に絶望してきた。

人の根源へと到達しようと式の身体を手に入れようとしている。

それだけに式対策は周到に準備を進めていただけあってシリーズ史上最も苦戦を強いられることとなる。

荒耶宗蓮という男は自分の力を過信せず一見格下とも思える式に対して念入りに準備する。

現実世界ならまず間違いなくできるビジネスマンだろうな。

そこまでして荒耶宗蓮が求める根源とはどんな夢物語で実現可能なことなのだろうか。

 

果たして今回突拍子もなく登場しメインキャラクターに溶け込み、巫条霧江や浅上藤野のような能力者でもない巴が奇妙な物達に影響を与えていくのか。

彼の存在意義とは一体?

荒耶宗蓮が欲しがった根源への鍵となる式の真の力とは?

シリーズを通してあまり語られない燈子と魔術師協会の確執とは一体?

謎が謎を呼び果たして終局へと至るのだろうか。

 

空の境界作品自体もTYPE-MOON作品の原点と言っても良い作品のため、のちの作品キャラクターと似ている人物が登場する。

荒耶宗蓮は「言峰綺礼」ですね。

ジョージ…ジョージ…ということもありますが、格闘技を得意とする大ぶりな戦闘シーン綺礼同様一見魔術には頼らず

武器や格闘技を用いて戦うがフェイントなど要所要所で魔術的要素を用いて工夫して戦っています。

コルネリウスは「間桐慎二」ですね。ワカメワカメ!

才能や自分のものを取られた嫉妬心や負け犬っぷりが最高に際立つ。

そのせいか燈子のぶちぎれシーンが拝めるのでコルネに感謝感謝!なんだこのジョジョポーズは…

黙っとけばそこそこ徳の高い立場なのに…

式は月姫の「七夜志貴」、鮮花のブラコンっぷりは「遠野秋葉」だし巴は最初「衛宮士郎」にも見えましたしね。

そんなこんなでのちのTYPE-MOON作品に影響を与えたキャラクターが総出演し物語の結末へ向かう本作。

黒幕の目的、式の能力覚醒、魔術師のぶつかり、才能の差と嫉妬、予想外の失脚。

様々な要素、思惑が混ざり合い螺旋状で対面した時何が待ち受けているのか。

小川マンションという一つの舞台に閉じ込められた真相にどのような形でけりをつけるのか。

まとめ

この章まで到達したあなたは空の境界の真実に到達したことになります。

ですが、その後根源への道のりへの実験動物の残党同士の本当の終わりへと物語は進んでいきます。

あなたはこの第五章を胸に過去の章へ遡ったり、続きの章へと向かい今度は考察をしていかなければなりません。

第一章~第四章まで訳が分からず観ていた方も第五章を観て振り返ってみるとことの全体像が見えてきて奥が深くなります。

また第六章、第七章に進むことで今までの章の出来事から影響した物語が展開されていくので本作を軸に過去と未来を行ったり来たりするのも良いですね。

そうしてあなたは空の境界ワールドにどっぷり使っていきますよ。

難解な作品なだけに何回もとはシャレがきいていますが、何度も振り返りたくなる作品であることは間違いないです。

しかもこの第五章「未来福音」までのシリーズと合わせると9作品。

そのうちの丁度中間の章となります。

事件の被害者と思われた起源覚醒のモルモット達のその後、

それにそして物語は考察から始まる切なくも美しい序章 劇場版空の境界第二章「殺人考察(前)」感想 微ネタバレでも紹介した話しは後編に続いているのをお忘れなきを。

物語の真相は明かされるが、式の心の奥底に抱えた人間としての起源覚醒ではなく、一人の人間「両儀式」の人格を探求していく必要がある。

物語の敵ではなく、主要キャラクターをもっと知りたい方はぜひ第六章、第七章もおすすめします。

アニプレックス 2011年2月2日

それでは次もね~

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