【アカイイト】何に結ばれ、何と別れ、何を持って未来へ繋がるのか和風百合伝奇の決定版

赤い糸。

縁結び、または既に存在する運命付けられている人との縁。

特に恋人との縁の事をさすことが多いこの言葉。

運命の赤い糸は運命なので産まれた瞬間、もしくは誰かが産まれた瞬間決定付けられてのか。

それとも誰もが糸を持っているが、自身の選択のちょっとした些細なことで切れたり繋がったりする変化するものなのか。

今回紹介するレトロゲームはそんな縁で結ばれた少女たちの赤い糸が誰かと繋がり、誰かと切れる、運命と別れを同時に味わうことになる物語。

タイトル販売元開発元発売日フォーマットアーカイブス

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・アカイイト

ジャンル和風伝奇アドベンチャーゲーム

プレイ人数1人

・サクセス

・ハムスター(GA版)

・サクセス

・ハムスター(GA版)

・2004年10月21日(PS2版)

・2005年10月27日(PS2:廉価版)

・2013年10月16日(GA版)

PlayStation2(プレイステーション2)

・有

・プレイステーションストア

本作のセールスポイント

・声優陣が豪華。

・伝奇という怪奇譚であり、少女の儚い百合でもある世界観。

・設定一つ一つに意味がありその意味が分かった時の爽快感とそれに反したモヤモヤするけどプレイヤーを惹きつけるシナリオ。

ストーリー

この夏、わたしはたったひとりの家族だったお母さんを亡くして遺産として残されたお父さんの実家を見るために、長い道を行く電車に乗りーー

とても不思議な夢を見た

思い出せない赤い記憶

群れ飛ぶ蒼い光の蝶

そして、悲しい目をした懐かしいあのひと

わたしの生まれ故郷でもある経観塚

そこでわたしは誰かと出会い、そこでわたしは誰かと別れる

過去と現在、夢と現、わたしの記憶とわたしの血

縁の糸が絡まりあい、寄り合わさってひとつの絵を成し

運命の輪が廻りだす

「アカイイト」説明書より

和風で百合な吸血伝奇の決定版

冒頭ストーリーでも記述した「思い出せない赤い記憶」という文言だが、記憶にまつわる衝撃、重大な記憶には「」という表現がよく使われている。

赤は注意、衝撃的、血など唇を強調する色など美しくも危険な色。

赤って美しいけど、妙に残虐性もある。

女性の唇の口紅なんかは笑うと美しいけど、不敵な笑みなどは物凄く凍りつかせるものがありますよね。

その両方を合わせた的を得た言葉に「美しいバラには棘がある」。

上手くいった言葉でもあるし、上手く表現された花だよなあ。

ある種の芸術品ですね。

本作の大きな特徴は女性主人公視点で女性との物語にいわゆる「百合要素」を備えた伝奇アドベンチャーゲームです。

主人公である「羽藤 桂(はとう けい)」は特に何の変哲もない普通の女子学生。

ある一点をのぞいては…

桂は人として過ごす分には問題がないが「贄の血」特殊な血液を宿している。

これは人外が摂取すると特殊な力が目覚めるというもの。

そのため物語では桂の力を狙うものや血縁のルーツなどが語られる。

桂は特殊な血以外は特に自身で戦闘力があるわけでもないため「贄の血」とは上手くいったもので、人外にとっての「動く栄養価の高い食用生物」という存在でしかない。

そのため生贄をまつるか奪われるか。

そんな物みたいな存在だが、ここが心が通っているかいないかの違い。

桂の選択肢によって物語は大きく動いていく。

 

本作、通常のテキスト、CGで紡がれるアドベンチャーパートに加え独自のシステム「吸血システム」があり、主人公の必要になる場面で消費されるシステムがあります。

桂の血は物語の大きな鍵となるのですが、攻略システム的には全体的に体感できるシステムではありません。

ただ主人公の「血液メーター」が0になると死んでしまいゲームオーバーとなりますのでシナリオ進行上必要な場面が多いシナリオでは注意して選択しましょう。

桂の周りは非常に桂に対して親切で献身的。

まるで家族、それ以上の存在として接してくることもある。

その人柄か神秘性か可愛さ、食物の匂いか。

とにかく守ってあげたいオーラが周りをどんどん物語の世界、自身のルーツへと引き込んでいく。

遺産って得するものばかりではないんですね…

良い事も悪い事も残してしまったものなんですね。

父親よ…とんでもない遺産を残してくれたな。

 

キャラクターたちも「エロ○○」といった一般ゲームながらも百合要素を備えた妖艶な姿が見られるのも本作の醍醐味です。

しかもただエロいわけではなく何とも危険な感じ。

特殊な性癖と言ってしまえばおしまいだが「ただ血を吸う」この一点。

これだけでも何ともいけないことの匂いが…

血を吸うというより主人公のフェロモンを吸っているような甘い空気。

そしてその演出を際立てる背景や陰影、音楽が女の子たちの雰囲気を勝手に盛り上げている。

プレイヤーも勝手に盛り上がる。

こんな愛情の世界、愛し方があるのかと言うシナリオライターの未知なる変態さ(褒め言葉)。

見ているだけが丁度良い「自分だったら経験したくないけど」という愛情が重い、深い百合こわ感。

私はこのシナリオを読んで声を大にして言いたい!

キスをしなきゃ恋じゃない、愛じゃない、百合じゃないは間違っていると!

 

更には声優陣が超豪華!

主人公の「羽藤 桂(はとう けい)」は「松来未祐」。

本作の脅威である「」を狩るものとして鬼と対峙する機関、鬼切部千羽党の鬼切り役「千羽 烏月(せんば うづき)」には「渡辺明乃」。

主人公の桂と同世代と思えない大人びた雰囲気、言動、さらにスタイルまで桂を落ち込ませるほど。

野生児少女だが10歳とは思えない知識豊かな天才児「若杉 葛(わかすぎ つづら)」には「釘宮理恵」。

しかし動作、喋りなどはやはり10歳児である。

ルポライター兼フォトグラファー兼主人公の母親が亡くなってからも頼れる存在な「浅間 サクヤ(あさま さくや)」には「真田アサミ」。

大人の色気と面倒見の良さ、サバサバした性格にナイスバディ。

しかも何かエロい。要するにいい女。

ご神木に宿るオハシラサマとして桂の前に現れ献身的に桂の世話をするようになる謎の少女「ユメイ」には「皆口裕子」。

物語の脅威として主人公たちの前に立ちはだかる吸血鬼の双子「ノゾミ」、「ミカゲ」には「小林恵美」。

そして個人的には主要キャラクターではありませんが桂の親友の「奈良 陽子(なら ようこ)」役で「能登麻美子」と豪華なキャスト。

この豪華声優陣によるフルボイスもただでさえ素晴らしい演出を更になまつば飲み込むような没入感へといざないます。

本作は和風や伝承の世界観ならではの専門用語など多く散りばめられており、和風好きならたまらない。

専門用語集が物語を考察したり、キャラクターのことを知る上で物凄く充実した設定集のような内容になっているため専門用語がわからない人でも楽しめます。

むしろある程度攻略してから専門用語集を見るとさらに世界観が広がり再度同じルートや先の物語が楽しくなってきます。

それに主要キャラクターが敵を狩るもの、神話・民族学に詳しいもの、ライターなど様々な目線から物語が語られたり、談笑したりするので一つの言葉に色々意味があったり、キャラクターによってとらえ方が違うなど難しい言葉を簡単に解説してくれるなど、万人の解釈に合わせてシナリオが進むのもありがたい。

わからない言葉でもこのキャラクターが言った解釈なら自分の知識にしっくりくるなど、物語に引き込む工夫がなされている。

犠牲にしない未来なんてないと言う本質を突く現実的な設定

本作はそれぞれキャラクターごとにバットエンド、ハッピーエンドが存在します。

バットエンドは言わずもがな、「物語の悪い終わり方」です。

誰か死んだり、誰とも添い遂げられなかったり、解決しなかったり。

いわゆるその時点でゲームオーバーでやり直しなわけです。

問題はハッピーエンド。

普通?定石というかアドベンチャーゲームって選択肢が良い悪いではなく、悪そうに見える選択肢でも結果的に良い選択をしハッピーエンドになると思うんです。

恋愛ゲームだと残念ながら誰か一人に絞るために振ってしまって傷つけてしまうヒロインがいます。

ですが、ヒロインは主人公を好きになったことを後悔はしません。

好きな人とハッピーエンド!

または欲張りみんなでハーレムエンド!

なんかが定番です。

しかし、本作は誰とのハッピーエンドでも、誰かを犠牲にしてきた未来の結果となります。

つまり全員がハッピーなエンドは実装されていないということです。

誰かと幸せになってもモヤモヤが止まらない。

頭の中ではああいう選択肢があれば、あの子はあんな目に…

なんて考えますが、そんな想像した選択肢は用意してくれません。

だからこそ本作は現実世界のように誰かの犠牲で成り立っている社会の縮図のような生々しくも不思議なストーリーとなっているのです。

あまりネタバレはしたくないのでキャッキャウフフな百合の世界でこんなことも起こりうるんだなという作中の画像です。

ああ~言いたい!でも楽しんでもらいたい!

緊迫したシーンのCGは冒頭の設定を大きくくつがえすものばかりなので画像でばれてしまうためこの辺で!

まとめ

ユーザーが感じるハッピーエンドはないことで賛否両論はあるものの、賛がある時点でこういう完全に救われない話しが好きな人には凄くおすすめしたい作品。

韓国ドラマなどによくある、どうやったら幸せになれるの?不幸は回避できないの?という永遠で届かないテーマを眺めるような。

ドキドキしてモヤモヤしたらそのまんま。

続編もなく、ただ置き去りにされた農村のような廃墟感、孤立感。

人里離れた空間で展開される外気に触れながらも閉ざされた密室感。

狭い中でもこれだけの運命が待ち受けているというエンディングの多さ。

運命の「アカイイト」などあるのかという逆説的なタイトルから繰り出されるその物語は永遠に私たちの中でモヤモヤし続けて、たまに取り出して救いの道を考察する。

そんな無限ループに陥るような世界観を持ったゲームです。

同じ世界観の姉妹作品「アオイシロ」は全員パッピーもあるのでオールバットやモヤモヤが苦手な人はそちらがおすすめです。

本作は中古でもまあまあ高価なので安価でプレイして見たい方はPS3アーカイブスもオススメです。

ちなみに中古購入されて特典アンソロジーコミックはネタバレも含むので本編プレイ後に見ることをオススメします。

サクセス 2004年10月21日

それでは次もね~

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