乱世の戦国時代。
様々な文献が残っているものの、それはほんの一握りの情報と筆をたしなめられるものの記録。
文字を読むこと書くことは誰でもできたわけではない。
そんな中起こりえたのは果たして戦だけだっただろうか。
戦いのきっかけは名誉と地位と金だけだっただろうか。
何か特別なほんの些細なことが時代の命運をわけたかもしれない。
例えば妖怪とか…
今回紹介するレトロゲームは原作未完のまま様々な解釈で語り継がれる名作をアレンジして一つの解釈として完成させた物語です。
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・どろろ
ジャンルアクションアドベンチャーゲーム プレイ人数1~2人・セガ
・セガワウ
・2004年9月9日
・2005年11月23日(ベスト版)
・PlayStation2(プレイステーション2)
・無
・原作は未完だが手塚プロダクション協力のもと、原作者なき後再現できる最高の完結版を体験できる貴重な作品。
・冒険王で連載していた単行本未収録の「冒険王」版の幻の設定をもとに再構築されているためタイトルの本当の意味がわかる。
・現代版にアレンジされている部分もありつつ、「どろろ」の設定を活かした育成システムとアクション性は原作ファン、ゲームファン納得の作品。
ストーリー
絶望、憎悪、欲望、そしておびただしい屍の山ーー
果てることのない戦が続く乱世。
人々は嘆き悲しみ、また新たな憎しみと争いを重ねていく・・・・・・。
この戦乱の世を裏で操る者どもこそ、太古から闇に棲み、人々の「負の感情」を糧としてきた魔神たちである。
あさましい乱世を見かねた天の神々たちは、魔神を討ち滅ぼす力を持った光の子を誕生させようとしていた。
それを知った魔神たちは一計を案じ、光の子の父親となる地方侍・醍醐景光に近づく。
夢の中で「乱世を治める力を与える」というお告げを聞いた景光は、やがて生まれる我が子のため自らの手で世を平和にしようと決意した。
お告げのとおりに「地獄堂」へと向かった景光を待っていたのは、天の神々ではなく四十八体のおぞましい魔神たちであった。
「乱世を治める力の代償として、生まれてくる子をわれらに捧げよ」。
驚きおびえる景光だったが、魔神の恐ろしい姿が彼の判断を狂わせ、呪われた契約が結ばれてしまった。
数日後、景光の子は生まれた。
魔神に捧げたはずの我が子が無事に生まれてきたことに安堵し喜ぶ景光。
だが次の瞬間、赤ん坊どす黒い影が包み込んだ!
「お前の子の体、われら四十八の魔神がしかと受け取った。約束通り、お前には乱世を治める力を与えてやろう」
ーー影が晴れたとき、赤ん坊の体からは四十八の部位が奪い取られていた。
景光は大声で泣き喚き、やがて思い詰めた表情になると、必死に止める妻を振りきって川へと向かう。
その胸には赤ん坊が抱かれていた・・・・・・。
河原で薬草を摘み歩いていた医術師・寿海は、タライに乗せられ川を流れてきた赤ん坊を見つける。
家へ連れ帰って手厚い看病をしているうちに、寿海は赤ん坊が不思議な力を持っていることに気づいた。
口や耳を使わず直接心に語りかけてくるのだ。
寿海は乱世で生き抜くために必要な知識を赤ん坊に教えた。
赤ん坊が三歳になったとき、寿海は己の知識と技術のすべてを用いて、精巧な義手・義足・義眼などを与える手術を行った。
訓練を重ね、自由に動けるようになったその子を、寿海は百鬼丸と名付けた。
百鬼丸が成長するにつれ、彼と寿海のまわりでは奇怪な出来事が多発するようになった。
十八歳になったある日、百鬼丸は天からの声を聞く。
己の出生の秘密・・・・・・体を奪っていった四十八の魔神を倒すか、奪った体で魔神たちが戯れに作った「人間」を探し出し倒せば、奪われた体の部位を取り戻すことができる・・・・・・。
魔神を倒すことを決意した百鬼丸に、寿海は最後の手術を施す。
百鬼丸の体にさまざまな武器を仕込む大手術である。
我が子のように慈しんだ百鬼丸への、せめてもの手向けであった。
こうして、百鬼丸の旅は始まった。
【どろろ】説明書より
どろろとは
「どろろ」は、「手塚治虫」による日本の少年漫画。
「週刊少年サンデー」で1967年8月27日号から1968年7月21日号まで連載された後、「冒険王」で1969年5月号から10月号まで連載されていました。
戦国時代を舞台に、妖怪から失われた四十八の自分の身体を取り返す旅をする「百鬼丸」と道中で会い共に旅をすることになるこそ泥の「どろろ」。
連載当時は読者に受け入れられなくアニメ化はするものの少年サンデー、冒険王の両方で打ち切られるものの、その後徐々に再評価を受けテレビアニメ、実写化、小説、スピンオフ、ゲーム化など様々なメディアミックスを果しています。
未完のままの打ち切りのため、原作「手塚治虫」亡き現在は誰も本当の完結を知ることはありません。
原作単行本は少年サンデーと冒険王で連載されたものをまとめて物語を再構成、加筆修正を行ったものが単行本化されています。
再構成するにあたって設定やお話しの削除があるため一部単行本未収録の回も存在します。
特に冒険王で連載されていた設定はその数奇な運命であらがい悩み苦しむ百鬼丸とどろろを鮮明に描き出されており、単行本化にあたり少しマイルドにしたのかその陰湿で暗いお話しは未収録となったようです。
しかし、手塚治虫、どろろファンの間では未完であるどろろを解釈する上では非常に貴重な資料でありお話しであるため幻の冒険王版として語り継がれています。
本作PS2版はその幻の冒険王版をもとに構成されているというだけあり、隠れファンが結構いる模様。
また百鬼丸の身体欠損表現が現代でどこまで再現、配慮、解釈し作品として落とし込めばいいかも慎重にならなければいけない作品でもあるため、どろろの本質を知る作品としても人気が高い。
ゲームオリジナル展開!その内容はなんとあの幻の冒険王版!
原作としての「どろろ」は未完のため、その後再評価の際には様々な解釈のもと完結させているシリーズがいくつか存在します。
テレビゲーム版としては1989年1月10日にクエイザーソフトからPC-8801mkIISR以降の機種に対応したアドベンチャーゲームとしての作品。
これは手塚治虫の絵柄に近づけたグラフィックで展開する物語です。こちらの作品でも別の解釈やエンディングを迎えています。
本作PS2版は家庭用作品としては唯一の作品であり、アクションゲームとなります。
グラフィックはPS2版に寄せたリアル調ですが、HD作品、アクション性を活かした作品とするためには最良の選択だと思います。
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その結果アクションによる爽快感と3Dグラフィックによる妖怪デザインや世界観の現実感と妖怪のおどろおどろしいさが再現されています。
そして本作は単行本未収録の回がある「冒険王」版の設定をもとに構成されているため今では非常に貴重なシナリオでプレイすることができます。
また当時の購入特典として「冒険王」版を抜粋したお話しの復刻版が付いてきました。
戦国時代をイメージした自然多き風景、農村、日本家屋建ち並ぶ乱世の風景。
本作はその世界観の中、妖怪を倒し主人公である「百鬼丸」の失われた四十八の部位を取り戻していくのが本作の目的となります。
原作では全ての部位を取り戻す前に連載が終わってしまったので四十八を取り戻す話しとして完結する本作は原作ファンにも魅力的な内容となっています。
更に百鬼丸が体を取り戻すことで様々な感覚が戻ってくる設定がそのまま演出や育成システムとしてゲームに落とし込んでいる点がゲームという媒体と相性がとても良い作品です。
例えば、原作で有名なシーンで「百鬼丸が左目を取り戻すシーン」があるのですが、それまで百鬼丸は目が見えないため、生まれつき備わっている不思議な力の感覚でものの位置や動きを感じ取っていました。
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そのため序章部分ではそれを表す演出としてプレイ画面はモノクロとなり、百鬼丸の目の不自由さを演出しています。
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そして左目を取り戻すシーン。
視覚を取り戻した百鬼丸は、ものの位置、動き以外に色を感じることもできるようになります。
それを表現するようにプレイ画面もモノクロからカラーへと変化します。
原作では読者という第三視点から見ていたものがゲームで百鬼丸視点に変わったことで生じるであろう感覚をプレイヤーに共有する演出は見事です。
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その他部位を取り戻していくごとにステータスが上昇、武器、技などが解放されていくシステムもどろろの設定とゲームとしての面白い要素がマッチしています。
また原作でもお馴染み相棒の「どろろ」は本作でも相棒として百鬼丸のサポート役で活躍してくれます。
ある時は妖怪に立ち向かい。
ある時はアイテムの回収に走り。
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ある時はその身軽さを活かして百鬼丸の代わりに屋敷に潜入したなど小回りの利いたサポートをこなしてくれます。
その際はどろろを操作するパートに切り替わりプレイヤーが操作することになります。
また本作は魔神を倒すことで四十八の身体の部位どれかを取り戻すわけですが、その方法はボス戦だけではありません。
隠れ魔神というステージの進行とは別にどこかに隠れている妖怪を倒すことでしか取り戻せない部位も存在します。
その隠れ魔神をどろろが見つけてくれることがあります。
流石はこそ泥!
このように二人で協力し百鬼丸の失われた能力を解放していき、魔神を討ち倒してストーリーを進めていきます。
百鬼丸の成長とともに極まる爽快感アクション!
四十八の体を失った百鬼丸の強みと言えばなんといってもその全身武器だらけの身体!
その失われた身体で戦いに挑む際に不自由ないように育ての親であり名医でもある「寿海」が旅立つ時に手術で施したてくれた「隠し武器」が様々存在します。
本作では主に腕の「仕込み刀」と「太刀」腕、足の「火器」がメイン武器となります。
原作でも仕込み刀の抜き身からの素早いアクションや体勢を崩し転びながらも敵に対して反撃を行う際に足を外し中から毒や焼け水などを放出し敵を翻弄していました。
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本作でも腕の仕込み刀は健在、そして腕と足には現代風やアクション環境を考え機関銃や大砲など「火器」が設定されています。
その仕込み刀と火器を使い爽快に繰り出すアクションに加え、仕込み刀は両手持ちの太刀とも変更可能。
更には妖怪を表示されたコマンド入力通りに切り刻みことで強力なアイテムが手に入る「スライスモード」。
そして様々な巻物を手に入れることで増えていく必殺技の「百鬼奥義」。
これらアクション要素を極めた究極の百鬼丸をプレイヤー自身で生み出し更なる爽快感を得られるのが本作アクションの魅力です。
まとめ
四十八の部位を奪われ、生まれてきた子供「百鬼丸」。
しかし、唯一奪われなかったもの「心」。
それは育ての親「寿海」の献身的で我が子のように可愛がり愛情を与えてくれたもの。
「心」は創り出されるもの、寿海だけではなく、どろろを始め旅先で出会う人々が百鬼丸の心を癒し、迷わせ、苦しめ、強くした。
それが百鬼丸の戦う武器となり強さであり、弱点でもあります。
本作で百鬼丸が取り戻すことでステータスが上がっていくがそれ以上に百鬼丸自身が得たものは光、味覚、食感など感覚の喜び、世界を感じる姿が年頃の青年でもあるにかかわらず初々しいものがあります。
人体欠損表現は現代では表現の厳しいものの一つですが、感じ取ってほしい部分はそこではありません。
足りないものを取り戻した。
様々な技術の進歩で自分が体験できない感覚を生まれて初めて体験した。
初めての体験は誰にでもいずれ訪れるであろうこの初々しい感動こそが最も作品で伝えたかったのではないか。
私はそう感じました。
それでは次もね~