【Forget me not-パレット-】赤を頼りに精神世界で記憶の真実を紐解くコンテストから生まれた大名作アドベンチャーゲーム

精神世界を表現するにはどうしたら良いでしょう?

何だかおかしな世界観?それともホラー?はたまたリアルに体の内部のような表現?

数多のゲームがそれにゲーム性を加えて表現してきましたがどれも奇ゲーと言われる雰囲気ゲームばかり(私は凄い好きですが)。

まるで小説のように明快でかつ万人に伝わるゲームはないだろうか?

それがあるんですよ!しかも開発者はプロではなく一般公募の作品が原作です。

今回紹介するゲームはフリーゲームの作品をリメイク作品として発売された極上の記憶アドベンチャーゲームです。

タイトル販売元開発元発売日フォーマットアーカイブス

クリックすると拡大します

・Forget me not -パレット-

ジャンルアドベンチャーゲーム

プレイ人数1人

・エンターブレイン

・原作開発者:西田好孝

・サクセス(PS版)

・2000年(フリーゲームとして配信)

・2001年4月26(PS版)

・PC(フリーウェア)

・PlayStation(プレイステーション)

・無(原作はフリーで配信中)

本作のセールスポイント

・記憶をテーマにした本格ミステリーアドベンチャーゲーム。

・「第4回アスキーエンタテインメントソフトウェアコンテスト」のグランプリ受賞作品のリメイク作品。

・記憶表現とサウンドを巧みに使い精神世界を独自の視点でゲームへと昇華させたフリーソフトウェア発の名作。

ストーリー

生物にとって、記憶はなぜ必要なのだろうか?

生物学において記憶とは「将来起こると予測される事象に対して、行動の指標となるべく記憶された判断材料である」と、定義されている。

つまり端的に言えば「いつか役に立つから捨てずにとって置いた物」である。しかし一方で生物は記憶を削除する。

覚えていることより忘れたことの方が多いのが普通である。

物置にも収納する限度がある、ということだろう。

それでは削除された記憶はどこへ行ってしまうのだろうか?

大切な記憶だ。まさかゴミにだしてしまったなんてことはないだろう。

余談だが、私の友人は物置いっぱいにガラクタを捨てられずにしまっている。

彼は物置に入りきらなくなったガラクタを、カミさんに内緒でこっそり別な場所に隠したらしい。

捨てろと言われても、彼にとっては大切な宝だ。

彼は巧妙にそのガラクタを幾つかの場所に隠したそうだ。

記憶も同じく、忘れてしまったと思っても、何処かに必ず存在しているのである。

自らも気づかないほど巧妙に、密やかにそれは心の何処かに隠れているのである。

息を殺し身をかがめ、それは待っているのである。

「いつか役に立つ」その日を。

そしてそれはほんの些細なきっかけでその姿をあらわす。

そのきっかけとは何であるか、それはまた来週のこの紙面で語ることにしよう。

ーシアノス・B・シアン

「Forget me not -パレット-」説明書より

ゲームコンテストから生まれた大名作アドベンチャーゲーム

Forget me not -パレット-」は2000年に開催された「第4回アスキーエンタテインメントソフトウェアコンテスト」のグランプリ受賞作品を製品版として洋ソフトとして発売されたものです。

本作の原作「パレット」は「RPGツクール95」で制作されており作者は「西田好孝」でフリーゲームとして配信されています。

クリックすると拡大します

本作PS版はフリー版を元にグラフィックやサウンドを刷新し新規イベントを追加したまさに完全版。

その完成度の高さから各方面やプロの開発者にも絶賛されており、かく言う私も学生時代ドハマりしました。

ゲームって学生時代あまり多くは買えなかったのでじっくり長い期間かけて遊びたいと思っていたので最初は少しずつ謎解きミステリーならなおさらと自重しようと思ってました。

しかしやり始めると先が気になって気になって!

更には本当にサウンドが良い。その不思議な音色がまるで誘うようにゲーム画面から目を離さしてくれないのです。

本作をスチームやそれこそ今スマホアプリやPSストアで売り出せば注目されるであろう作品なだけにアーカイブス化を期待している作品でもあります。

隠れた名作なんて言われますが個人的には大名作でアドベンチャーゲームの面白さを始めて感じた作品でもあります。

 

ちなみに第一回はRPG作品の「クック・ドゥ・ドゥル・ドゥー」がグランプリ受賞。

第二回はグランプリは該当なしだがあの有名なホラーアドベンチャーとして後に様々なメディア展開された「コープスパーティ」が最優秀賞を受賞している。

第三回はこれまたグランプリは該当なしでRPGの「BOOBY SHOW」が準グランプリを受賞している。

そして第四回は本作アドベンチャーゲームの「Forget me not -パレット-」が満を持してグランプリを受賞しました。

第五回は主宰が変わり「エンターブレインゲームコンテスト」と名称を変えて開催となりました。

そして最優秀賞としてアクションロボット作品の「噴式」が受賞してその歴史に幕を閉じた。

かつてアイデア一つでこういった高額賞金のコンテストが開催されましたが、最近はインディーズゲーム市場の拡大で自ら売り込むが当たり前になった今ではアイデアコンテスト自体も時代とともに減りつつあります。

しかし、素人ならではの発想力を集結した場を設けるのはゲーム業界にとっても大変良いことなのでコンテストではなくてもこういう場が広まればと思います。

ゲームショウなんかもどうせ発売されるゲームより専門学校やインディーズ、海外メーカーのブースに立ち寄ることの方が私は多いですね。

2017年VR元年なんかはVR作品が多く展示されPSVRは大盛況のため整理券瞬殺の腹いせにたまたま立ち寄ったブースのVR作品に夢中になるという。

決してグラフィックに優れているわけではありませんでしたが新たな遊び方を新たに提示したその作品はとても可能性を感じずにはいられなかったことを覚えています。

赤の記憶が本作のテーマであり全て攻略の鍵

本作は精神科医の名医である「シアノス・B・シアン」の診療所に「B・D」と呼ばれる記憶を無くした少女の記憶を取り戻すように依頼される所から物語は始まります。

夜だったこともあり一度は断るも銃を突き付けられたことで診察を承諾することになるシアン。

依頼者の女性は脅しをするものの切羽詰まった状況を打破するために銃を所持している少し訳ありな様子。

それほど少女の記憶には何か大きな秘密が隠されているようです。

B・D」が覚えているのは「赤い色」だけ。

それ以外の目も見えないため自分の姿すら思い出せない。

本作主人公の「シアン」と「B・D」はこの「赤い色の記憶」を頼りに少女の記憶の真実を探究します。

ちなみにシアンの名前は「シアノス(古代ギリシャ語で暗い青)」、「B(ブルーの頭文字)」、「シアン(三原色のシアンブルー)」と全て「青色」が含まれた名前です。

「B・D」は赤い記憶しかないから「R・D(レッド)」ではないんですね。

ここまでくると三原色の最後「黄色(イエロー)」は何か物語と関係があるのでしょうか?

それとも三原色が混ざり合うと「黒色(ブラック)」になってしまうという結末的にバットエンディングだから避けているのか?

精神世界の表現がシンプルだが記憶世界の核心に迫るデザイン

本作は「シアンの部屋」と「B・Dの精神世界」を行ったり来たりして攻略を行います。

「B・Dの精神世界」は記憶ごとに小部屋に分かれており次の記憶への行き先が小部屋と小部屋を結ぶ糸で結ばれています。

各小部屋もしくは何らかの条件をクリアすると新たな記憶の断片として別の小部屋への移動が可能となります。

小部屋というよりかは各記憶の部屋はB・Dの「記憶のワンシーン」ととらえるべきでしょう。それをきっかけに別の記憶のシーンに飛べる。

シンプルですがこのシステムデザインはプレイするものをどんどん引き寄せる力があります。

 

またB・Dには精神世界での殻を破るべく「精神ゲージ」というものがあります。

これは記憶と記憶の間に存在する部屋にガラスの障壁のようなものが存在します。

これは「精神障壁」と言いB・Dの記憶への道筋を塞ぐ障害となります。

これを精神ゲージを1消費することで障壁を1つ破壊することができます。

しかし、攻略の分岐条件などが不十分だと精神ゲージが足りずに前の記憶に引き返すことになります。

この精神ゲージが次の記憶に行くまでに不十分ということはまだ何かしら記憶の断片が解明されていない証拠なので再度探索を続けましょう。

精神ゲージが0になるとB・Dの精神が持たなくなり倒れて場面はシアンの部屋に戻ります。

本作B・Dとの精神世界にアクセスする手段はなんと「電話」でアクセスしておりB・Dにとってはまさに脳に直接語り掛けられているような感覚でしょう。

これの方が精神的につらそうですがシアンの秘密道具なのでしょう。

時代背景が古そうなだけにネットワークで繋ぐものを電話で表現したのかもしれません。

またリメイク版はフリー版と違いシアンのブルーを対比の表現や記憶のゆらめきとして表現しているのがただのリメイク版ではないなと感じました。

秘密が明らかになってくる快感とその先の考察が止まらない

B・Dの精神世界を彷徨っていると、あちこちに殺人現場にあった死体や物の位置を把握する「白い枠」のようなものが点在しています。

これはB・Dが忘れてしまった記憶の断片を形ははっきりしないがそこに何かがあったという「手がかり」を指示した場所です。

クリックすると拡大します

その白い枠にアクションを起こすと実像となって浮かび上がります。

その際に白い枠の記憶が語りだすのですがこれがどれもミステリアスというかそこで語られることの裏側が知りたくなるようなものばかりで、それが物語を読み進めたくなる大きな要因の一つとも言えるでしょう。

また探索中ある特定の物をチェックするとB・Dの行動が「移動モード」から「探索モード」に切り替わります。

クリックすると拡大します

探索モード」とは部屋の移動は出来なくなりますが、そのかわり部屋の中で今まで見えなかったものが浮かび上がってきます。

本作で最も重要でありB・Dの唯一の希望であり支えでありシアンにとっても唯一の手がかりとなる「赤い記憶」です。

赤だけが浮かび上がる世界は薔薇のような美しい物も浮かび上がりますが、まるで血のような禍々しいものも鮮明に映し出して「パレット」の世界をよりディープなものにしてくれます。

また物語を進めるとB・Dにとって重要な記憶となるアイテム「記憶の断片」を入手する機会が訪れるでしょう。

記憶の断片を入手することで「精神ゲージ」が1つ増え、今まで障壁を破壊しきれなかった部屋を突破でき、より深い記憶を探究する足掛かりとなります。

本作はこれらの探究→精神障壁破壊→記憶の断片入手を繰り返して真実への扉を開いていきます。

クリックすると拡大します

B・Dの精神世界」の探索が進むにつれてシアンの部屋にも影響が及ぶというホラーな一面もありミステリー小説のような実像のある話しとゲームならではの虚像が入り混じった世界観と結末へのカウントダウンが病みつきになり真実に到達するまであなたはシアンと共に時間も忘れて長い夜を過ごすことでしょう。

そして衝撃のエンディングを迎えた時あなたはどう感じるでしょうか…

まとめ

最近はフリーゲームやインディーズゲームが市場の勢いも増してきた今「ゆめにっき」しかり本作「パレット」も再評価を受け先駆者として日の目をもう一度見ても良いのではないかと思う今日この頃です。

特にパレットはメディア展開などがないためどうしても埋もれがちで隠れた名作としか呼ばれません。

ゆめにっき」や「コープスパーティー」のほうがメディア展開が多く派生作品、リメイクなどを繰り返して海外など未だに根強い人気を誇っています。

「パレット」はこの作品で完成・完結されており、ある意味非の打ち所のない流石はグランプリ受賞作品と言うべき作品となってしまったのです。

今回紹介することでプレイする人が増えたらいいな~

私も今回紹介する上で久しぶりにプレイしましたがやっぱり抜群に面白い!丁度忘れたころ合いだったのでかなり楽しめました。

グラフィックとサウンドの観点から断然PS版を推したいですが物語とゲームを遊ぶだけならフリーゲームとして無料ダウンロードで遊ぶこともできるので是非にでもオススメしたい!

プレイ自体もアクションゲームのようにせかせかしていないのでじっくり没入して楽しめる点でもオススメですよ!

エンターブレイン 2001年4月26日

それでは次もね~

関連記事(一部広告含む)

よろしければシェアお願いします!