茨の道を行く…なんて困難な道を選ぶ時に人はそのように言います。
棘が生い茂る棘を踏み、掻き分けそれでもその道を選ぶ。
しかし、困難な道を選ぶからと言ってそれが報われない道かというとそうではない。
その先に綺麗な綺麗な薔薇が咲いている。
今回紹介するレトロゲームはそんな茨の道の先に理想郷を求める6人の薔薇たちの鋼鉄の意思が美しいシューティングゲーム。
あなたはきっと美しくも爽快感がたまらない世界観に酔いしれるでしょう。
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・鋳薔薇(いばら:ibara)
ジャンルシューティングゲーム プレイ人数1~2人・AMI(AC版)
・タイトー(PS2版)
・ケイブ
・2005年6月(AC版)
・2006年2月23日(PS2版)
・AC(アーケード)
・PlayStation2(プレイステーション2)
・無
・キャラクターデザインと設定の確かなマッチメイクによりキャラクターの個性が活かされた世界観。
・アーケード版から大幅に改良され完成度が上がった「アレンジモード」が搭載。
・「自爆前提」という戦略が必要な異色の攻略要素がハマればハマる
ストーリー
時は19世紀。蒸気機関の発達で沸いている、北欧の国「エーデルワイス」
エーデルワイス国は特に、精密な機械技術産業に長けた国であり、その発展も目覚ましい。
だが、暗雲はいつも突然に訪れる。
誰もが願わぬ時に。
その日は妙に煙たく、冷たい空気の朝だった。
かつて「テレサ・ローズ博士」と呼ばれていた女性は不敵に微笑む。
「汚らわしい地上を、人類を、全て壊してしまいましょう。この世界をキレイにしてしまわなければ。そうねその後は…地上一杯にステキなバラ園を作りましょう。」
「ワタシタチガ キレイニ シテアゲル」
5人の娘達と、刃の塊のような要塞と共に、テレサは侵攻を開始した。
「ローズ・ガーデン」と記された紋章の下不気味に笑う鉄人に爪が建物を破壊し、空を覆いつくす飛行機の咆哮が大地を焦がす。
人々の悲鳴と立ち上る炎が要塞を照らし、さながらそれは紅蓮の大地に咲く一輪の美しい花。
「ローズ・ガーデン」の勢いは物凄く、エーデルワイス政府軍は苦戦を強いられていた。
鎮圧どころかむしろ悪化を見せる戦況に、政府軍では手に余ると見たエーデルワイス皇宮は、「ネゴシエーター」と呼ばれる皇宮特殊攻撃部隊に出動を命じる。
”直ちに武器を以って「ローズ・ガーデン」の殲滅にあたれ。”
密かに用意されていた”武器”
それはまるで、あの脅威に対抗する事を予想していたかのような力を有し、まさにこの日を待ち望んでいたかのように、まぶしく光を放っていた。
鋳薔薇説明書より
キャラクター要素重視の本作のキャラデザはイラストレーターの「コタニトモユキ」が担当
本作は機体の無骨さと対比させるためにキャラクターという要素を際立たせるためキャラクターデザインにも力を入れています。
本作のキャッチコピーは「ワタシタチハキレイ」と自己肯定意識を前面に出したビジュアルいいでしょ感。実際に良いし…
「私綺麗?」と口裂け女のマスク美人でなくて良かった。本当の美人さんだ!
キャラクターデザインはあのケイブの人気シューティングシリーズ「虫姫さま」のキャラクターデザインを担当したイラストレーターの「コタニトモユキ」が担当しているだけあり、本作のキャラクターのビジュアル面を重視した試みに合った高いデザインレベルに仕上がっています。
本作は虫姫さまの可愛いイメージから一新して可愛いけどクールで美しいビジュアルになっています。
ボスが全員女性なだけにビジュアル面としてそれぞれに少しずつ違った個性を出しています。
空挺部隊指揮統括担当の「メイディ・ローズ」と陸上部隊指揮統括担当の「ミディ・ローズ」は仲が良く「陸空姉妹」といったところでしょうか。
正にメイディ・ミディの「MM姉妹」!
「カスミ・ローズ」は兵器生産担当で内職担当の「箱入りお嬢様」でしょう。
情報統括担当の「シャスタ・ローズ」は身軽で武闘派な風貌から「スパイガール」といったところでしょう。
戦略立案担当の「レース・ローズ」は冷静沈着ローズ・ガーデンの「諸葛孔明」のような立ち振る舞い。
そしてみんなのママこと「テレサ・ローズ」。正に「マザー・テレサ」。
こうしてみるとデザインが非常にキャラクター設定と合っているので個性的な差別化ができています。
本作は「ギャラリーモード」も収録されているため本作自慢のビジュアルデザインを存分に観賞することができます。
ちなみに私はテレサママがお気に入り。
上半身の悪役っぽい意地悪継母のようなデザインと下半身の薔薇のようなスカートでの煌びやか印象と少しボーイッシュともとれる短くはないが尖った髪型がカッコイイ女性のイメージを引き立てていますよね!
この強き女性を打ち負かす感がゾクゾクする!あっ変な意味じゃなく。
ボンド、ダインが立ち向かうのはテレサ・ローズ率いる精鋭部隊「ローズ・ガーデン」
本作では精鋭部隊「ローズ・ガーデン」に挑むのは二人のエーデルワイス国皇宮直属特殊部隊の「ネゴシエイター」である「ボンド」と「ダイン」。
ボンドが武機と呼ばれる自機「シリスター・シリウス」が1P側でダインの自機である「ディオ・スピロッシ」が2P側であり両者ともそれぞれ機体性能が違います。
シリスター・シリウス(1P) | ディオ・スピロッシ(2P) | |
ショット | 集束型 | 広範囲型 |
ボム | 高速拡大型 | 低速残留型 |
速度 | 速い | 遅い |
オプション効果の方向 | 移動方向 | 移動方向と逆方向 |
オプションの向きの変更 | 左右移動のみ | 180度変更可能 |
出来ることを理解してこの死にゲーの攻略の糸口を掴め!
・ショット
機体性能やオプションによっても変化するが通常のショット。
ショットアイテムを取ることでパワーアップする。
・ボム
ボムアイテムを取ると敵弾を消すことができます。
ボムの取得数で威力も変化し40個取得した状態だと「波動ガン」相当になる。
敵弾が消えると得点アイテムの「薔薇」に変化します。
・波動ガン
ボムアイテム(大)かボムアイテムを40個集めた状態で発射できる。
波動ガンは耐久力の高い敵に当たると炸裂したあとも密着して大ダメージを与えることができるためボス戦などで有効です。
また、後ろに発生した衝撃波で敵弾を消すことができる。
アイテムは攻略する上でキーとなるアイテムばかりなので積極的に取得しときたいですね。
・ショットアイテム
ショットを1段階パワーアップさせるアイテム。
自機の状態で特定数取得する必要もある。最大7段階まで強化可能。
・ショットアイテム(大)
ショットアイテムとは違い無条件で1段階強化可能。
・ボムアイテム
取得数すればするほど威力が上がっていく。
40個集めると波動ガン(ボムアイテム(大)相当)の効果となる。
使用しながら如何にボス戦で波動ガンが打てるかも攻略の大きな鍵。
・ボムアイテム(大)
波動ガンを発射することができる。
ボス戦などで有効。
・1UP
自機の残数を1機増やすことができる。
自爆死にゲーなだけに凄く重要なアイテム。しかしランク制が残機の補充すら苦しい要素となる…
・薔薇
得点が増える。
・勲章
連続で取得するとレベルが上がり得点が大幅にアップする。
本作最大の攻略ポイントであるランク調整
これらの武装やアイテムを使用しながら襲い来る薔薇たちに薔薇の花びらのように散りながら(自爆しながら)進んでいきます。
特に「アーケードモード」はそれらの潔さも大事になってきます。
本作は「死ぬことにメリット」が存在します。
自機が自爆することで「初期のボム補充状態に戻る」ことと「ランクが下がる」ということです。
ボムはアイテム回収や得点稼ぎのために多用するためどうしても不足がちになるためその解消方法として自爆。
ランクは一定の得点を稼ぐとランクが上昇し難易度が上がってしまいます。
それらは残機が少ないほど死んだ時のランクの下がり幅は大きくなります。
しかし、少ない残機で難易度を下げてもそこで死んで自機の残機が0になればゲームオーバーです。
難易度の調整が初心者の方には難しく「敵弾を避けること以外にも目を配る」というマルチタスクな攻略方法が魅力でもあり嫌煙されるところでもあります。
ステージ1:PORTTOWN~破壊と共に始めましょう~
エーデルワイス国自慢の工業地帯。今は鉄人達の場所。
エーデルワイスの素晴らしい発展の源、自慢の蒸気機械生産工場だった場所。
沢山の人が行きかっていた工場も、ローズ・ガーデンの侵攻により、今は鉄人たちが働く、血も通わぬ冷たい場所に。
まずはここから取り返す。
ステージ2:CANYON~イシ~とホコリの心~
重要な石炭採掘場。そこにも敵の爪は容赦なく刺さる。
最も重要な動力資源である石炭。その採掘場。ローズ・ガーデンは容赦なく侵略する。
本当に人類を絶滅させる気なのか?
その答えは、この攻撃が全てを語っている。敵の形が教えてくれる。禍々しい刃の兵器。
ステージ3:VALLEY~黒く深きに薔薇が見えて?~
渓谷を移動中の敵部隊を叩く。爪の足は全てを砕くため。
沢山の爪が山肌を引っ掻き、傷跡を残す。そうして前へ進むローズ・ガーデンの列車。
触れるモノ全てを傷つけるローズ・ガーデンに容赦は無い。
だがあの頃の博士は笑っていた。その笑顔を思うたび、このオレの左手が疼く。
ステージ4:SKY HIGH~大空にも刃羽を食い込ませ~
高高度に展開中の浮揚戦艦群。
大気は突き刺さるように冷たい。
ローズ・ガーデンの鋭い兵器群は、この上空の冷たい空気に良く似合う。鋭く光る機体に、とてつもない美しさすら感じる。
それは彼女らが「人類抹殺」を一途に願う純粋さゆえなのか。かつてオレにこの腕をくれたテレサ博士も、一途に人を助けようとしていた人だった。
ステージ5:CASTLE~鋼鉄の家族と共に~
敵組織の中核に侵入。そこは鉄人達が徘徊する街。
今はローズ・ガーデンの重要拠点。かつては歴史ある街で、穏やかな時間が過ぎていた。
訪れる人々の息遣いが今も聞こえてくるようだ。だが今聞こえるのは、無機質な鉄人が行き来する騒音。
人々に失望したとはいえ、博士は進む方向を間違ってしまった。
ならばそれを導くのが、オレたちの恩返しだ。大切な博士のために…。
ステージ6:GARDEN~私はバラで出来ている~
薔薇園…。血のように赤い赤い薔薇が、誘うように光る。
…そう。博士は薔薇が好きだった。地上を薔薇園にすると言う侵攻と願いは、ココを見れば、その本気さと一途さがわかる。
ここにある薔薇は、なぜそうも毒々しいほどに赤いのだ。
まるで人々の血を吸って咲いたかのように赤いまでに赤い。
「アーケードモード」には隠しモードで高難易度モードの「ハーダーモード」と2週目以降の耐久モードである「エクステンドモード」が用意されています。
…ただでさえ難しいのにこれ以上俺にどうしろと思わんばかりのふっかけ難易度。
これが達人級を目指すものの茨の道か…
私はひたすら逃げて部分を特定のステージやボス戦を練習できる「プラクティスモード」で遊びますかね…
BGMを聞く間も与えない死に要素で起きた惨劇「鋳薔薇ショック」
ケイブファンの間で語られる「鋳薔薇ショック」なるもの。
それはゲーセンで実行するにはあまりにも意地悪過ぎる要素だった。
鋳薔薇の攻略方法は死ぬ前提もののためゲーセンではある程度無条件でクレジットを消費してしまうというもの。
ステージ冒頭の「ワタシタチガキレイニシテアゲル」は正確に言うと、「ワタシタチガ財布の中身をキレイニシテアゲル」だったかもしれません。
正に「ダークソウルアーケード」なる死にゲーが置いてあるようなもの。
…いやダークソウルならまだ良い…上達すれば「死なない攻略方法が身につく」からだ。
しかし鋳薔薇は死なないでクリアは正に達人級の離れ技。
家庭用ではいくら死のうと繰り返し遊べるため「死にながら攻略する」は味になるのだがゲームセンターではそれが裏目に出てしまった。
「虫姫さま」で新たに人物ビジュアルも高水準なジャンルを切り開いただけに後になって惜しまれる声も多い。
BGMはサントラ聞けばってゲームのBGMはゲームに合わせたものだからゲームの雰囲気を味わいつつ聞きたいじゃん…
でもそう考えるとソーシャルゲームって不思議。
ほぼ死んでるのに課金し続けるように誘導するなんて恐ろしい仕組みですよね…
移植で遊びやすくなったPS2版とブラックレーベルが普及すればと嘆かざる負えないアーケード展開
「鋳薔薇ショック」半年ちょっと経ったころPS2版が発売されたわけですが「死に要素」については家庭用では味となった本作ですが、アーケード版のユーザーに向けてのメッセージもしくはケイブなりの謝意でもあったのでしょうか、格段に遊びやすくなった「アレンジモード」が追加されました。これは「鋳薔薇黒 ブラックレーベル」の元となった改良モードです。
PS2版の要素としては「難易度調整要素の改善」「連射ショットが強力になる」や「サブウェポンチェンジ」と「フォーメーションチェンジ」が追加されました。
・大量得点の爽快感と難易度調整がしやすくなった
ランク制ではなくランクゲージによる難易度制で敵弾の大量発生時に「ボンバー」を放つことで大量に「薔薇」が獲得できる。
その「薔薇」を取得することでランクゲージを減少させることができ、ランクリセットを行うことができるようになった。
この要素のおかげで高得点&ランク上昇という危機感からの脱出の爽快感がもはや「別ゲー」と呼ばれるまでの代わり映え(良い意味で)となった。
ブラックレーベル版からはこれらのシステムを薔薇でランクゲージ現象をもじって薔薇DIEす=バラダイスシステムと命名された。
・セミオートショット
移動速度を落としながら強化された弾を発射可能。
・サブウェポンチェンジ
▢ボタンを押すごとに「マシンガン」⇒「5Way」⇒「ガトリング」⇒「ロケット」⇒「バーナー」⇒「ナパーム」⇒「ホーミング」の順に任意で変更することができます。その際、本作ではオプションが3つ装備できるのですがアレンジモードではオプションアイテムを1つ取るだけでそれらを同時に同じ種類に変更することができます。
・フォーメーションチェンジ
△ボタンを押すごとに「ノーマル」⇒「ワイド」⇒「ローリング」⇒「サーチ」の順に任意でサブウェポンの動きを変更することができます。
ちなみに家庭用の「アレンジモード」は1人専用なので途中参加やコンティニューができない仕様となっています。
これらの要素が組み合わさることで自機の生存率が格段に上がり遊びやすくなりました。
私なんか移動速度落とす要素がないと勝手に敵弾に突っ込むタイプなので非常に助かりますし、これだけ破壊系なシューティングゲームなのでサブウェポン周りを任意で切り替えられるのは避ける動作に集中できて下手くそシューターの私でも攻略の楽しみが満たすことができます。
「鋳薔薇黒 ブラックレーベル」では更に更に遊びやすくなる要素が充実していましたが、「遊びやすさ」は解消されたものの生産数の関係でおいている店舗や基盤を所持している人数も少ないため「遊べる環境の見つけやすさ」では高難易度となってしまいました。
・自機の当たり判定が小さくなった
自爆前提の遊び方で当たり判定が多いと自爆したくないときに死ぬ確率が上がるからこの要素は凄く遊びやすくなっている。
無印はそのおかげで手汗やら色んなものが出てくるぐらい緊迫したプレイができたので「楽しければOKです!」。
・アイテムの自動吸い寄せ搭載
出現したアイテムを自動に吸い寄せることでそれらに目を配らなくても良くなり画面を把握しやすくなった。
個人的には元々無印から実装しても良かったのでは?と思い家庭用に無いのが残念でした。
まとめ
ブラックレーベルも含め本作家庭用では「まるで別ゲー」と言われるほどアレンジモードに関してはシステムを改良に改良を重ねている本作。
アーケード版がショックなだけにその影響への不安か家庭用とブラックレーベルに関しては出荷を大幅に落としているため中古市場ではプレミア価格となっています。更に改良されて完成度が高い「鋳薔薇黒 ブラックレーベル」に関しては流通数が100本なのと基盤ということもあり相当なプレミア価格となってしまっています。
「鋳薔薇ショック」でわかったことはケイブファンもといシューティングゲームファンだからといって私も含めみんながみんなシューティングゲームがうまいわけではないということです。優しく作るのはもっとダメだけど普通モードを達人級に作ってしまうとそれはそれでクリアとかではなく楽しめないで終わってしまいます。もう本当によくPS2版で同梱されるシューティングゲームの「スーパープレイ集」並みの動きをしないといけないのは流石に鬼畜難易度とかじゃなく意地悪難易度とかになってしまいそうです。
ですが本作PS2版はアーケード版に萎えてブラックレーベル版は手が出ない、しかしそのビジュアル面やゲームシステムには惹かれるものがある方はPS2版をおすすめします。PS2版もプレミア価格となってしまっていますがアーケード版のクレジットで消費する量を考えたら安いのかなと思ってしまうあたりヤバイかもしれませんがそれも一理ぐらいはあるかなとも思います。
時代が「萌え」よりとなり、シューティングゲームもその要素が求められてきた中でシューティングゲームという良さと新システムで挑戦し続ける、そして時代に取り残されつつあるシューティングゲームを作り続ける、それがどんなに大変なことか。
ゲームセンターの縮小やダウンロード販売などシューティングゲームが生き残る道を模索しつつある現代で「今復活して欲しい、後世に残って欲しいシューティングゲーム作品」は沢山あることでしょう。その中に「鋳薔薇」も存在します。
ブラックレーベル…家庭用で出ないかな…
ちなみに続編として本作のボスのローズ姉妹たちが実機で使用できる「ピンクスゥイーツ ~鋳薔薇それから~」がXbox360で発売されています。
これは本作の可愛いローズ姉妹を使用出来たらと思うユーザーの夢とキャラクター人気は無印含めても高い「鋳薔薇シリーズ」の実績が後押しした作品です。
それでは次もね~